2018/12/28
師は今、宿舎に併設されている専用打球場で、日常生活になんの憂いもなく、主に「野人」のスイング造りに取り込んでいる。
言うまでもないが、日本ゴルフ界に燦然と輝く成果を残したOやNを、その希代の実践理論とコーチングで、スランプから大復活させたスイング理論に、共感を覚えた者も沢山いたと思う。
(師と野人、初めての出会い)
オイラも30年以上前から、師の理論に注目し、その書物に着目したひとり。
特にOの復活作戦での、ゴルフ雑誌誌上同時進行で掲載されたゴルフ理論と、その成果には驚いたものだ。
当時、師のことを知らなかったオイラは、「このオヤジ、ここまで書いて大丈夫かいな、赤っ恥かきよるで!」と思って誌面を読んでいた。
・・・・「三年でOを賞金王に復活させる?」・・・・・ホンマかいな!
・・・・「ワシの預言は必ず当たる?」・・・・・Oはもう終わってるで!
・・・・Oは40歳を超えているにも拘わらず3年で!・・・そら無理やで!
当時名だたるプロゴルファー、コーチ、Oのファンたちも含めて、その復活を信じた者は居なかっただろう。
当然オイラもそう思っていた。しかし、師の予言どおりに賞金王に大復活し、その後60勝というとんでもない大記録まで打ち立てた。(但し、OもNも己の才能のみで達成したと公言しているが)
その後、OやNと決別した師は、後藤塾を主宰し、多くの研修生たちを指導しつつ、時折雑誌やホームページなどでその理論を見かけることはあったが、その近況はあまり知られることが無くなった。
塾生たちも、そのほとんどが師の下を去って行ってしまったようだ。
師の言葉に、本物のスクエア打法とは
「才能のあるものでも5年、或いはそれ以上の年月が必要だ」
「コンビニで缶コーヒーを買うように、すぐには身につかない」
「長い時間を掛けなければ、本物のスクエア打法を習得できるものではない。」
・・・・わかっちゃいるけど、早く良いスコアという結果を求めてしまう。
当然「素質」が無い者は、5年以上かけても結果が出ない。
OやNのようなゴルファーを目指したものの、年齢も重ねてゆき、経済的にも自立できない不安との葛藤の中、去ってゆく心情もよくわかる。
建設中の専用打席で熱血指導中!
が、「野人」は師の下に残っている。
10年以上!という年月をかけながら、未だにハーフ50というスコアを叩くにもかかわらず、黙々と寡黙に、師の下でトレーニングをしている。
今は野人の風貌となったこの練習生、元来スポーツ経験なし、身体能力も下の方という「もやしっ子」。
おまけに、アトピーや花粉症などのアレルギー体質に強度の近視。辛抱強いだけが取り柄の「素質ゼロ」という男の子だった。
入門当初、師曰く
「見たところOやNのように、金やダイヤモンド素材では無いので、何年かかるかわからないけれども、まずは素質造りからやっていく。
その過程で鉱物ではない素材、土のようなこの素材をダイヤモンドより硬いセラミックになるようにしてゆこう、時間をかけてゆっくりと。但し!ワシの訓練について来れるのならば」
そして「この子には、花粉症も含めてアレルギー等の薬は一切与えない。ワシが食べ物でこの子の体質を変えてみせる!」
なにせ入門当時のドライバー飛距離がフルスィングで200ヤード程度。
180ヤードを越えるPar3ではドライバー以外のクラブでは届かないほどの非力、そして虚弱体質。
入塾当時の平均スコアが100以上というこの子供を、世界戦で通用するゴルファーに変貌させるという無謀な挑戦が、10年を経てやっとスタートした。
師曰く、「やっとスイング造りの基礎部分ができあがったに過ぎない」
「そう、10年を費やしてようやくピラミッドの基礎が固まった。これからやっと始まりじゃ」